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きらり看護

きらり看護

きらり看護

看護師になって2年目の冬、私は夜勤をしていた。私の病棟は慢性期病棟で、お看取りをすることが多くある。この日も肺炎で一人の男性患者の死が近づいていた。
その患者A氏には、いつもお見舞いに来てくれる大切な奥さんがいる。
毎日お見舞いに来ては「お父さん寒くない?痛い所はない?」と話しかけ、いつも寄り添っていた。 A氏は肺炎でご飯も食べることができず、徐々に弱ってきていた。
その夜、A氏の酸素化が悪くなりリザーバー10L、血圧も下がってきた。
私はすぐに奥さんに電話し、病院に来るよう説明した。奥さんが来た時には下顎呼吸になっていた。到着してすぐNsステーションにきた奥さんは「娘と孫にも会わせたいけど2人ともインフルエンザなの。来たらだめですよね?」と尋ねられた。
病院で感染が拡大してしまう可能性があるため、会うことは難しいことを伝えた。
奥さんは悲しそうな表情で「そうですよね。私がそばにいます」といって部屋に戻っていった。
家族と最期にあえない患者、家族の気持ちを考えると、私はとても辛い気持ちになった。
そこで、「娘さんたちの声を電話で聞かせてあげませんか?」と提案した。
娘さんに電話をかけスピーカーにして「耳は最後まで聞こえていますよ。たくさんお話してください」と伝えた。
「お父さん聞こえる?○○だよ。」A氏の耳元では奥さんと娘さんの声が響いていた。
私が部屋を出て数分後、心電図モニターのHRが0へとなり、心臓が止まった。
部屋に入り、心臓がとまったことを伝えると、奥さんは「ありがとうございました。最期
に会わせてあげられないからどうしようかと思っていたけど、声聞かせられて良かった」と涙ぐみながら私にほほ笑んだ。その表情をみて、悔いのない最期の時間を過ごすことができたのではないかと感じ、看護の喜びを感じた。
A氏はまるで眠っているかの様に、安らかな表情だった。きっと、家族の声を聴きながら幸せな気持ちで天国へ旅立つことができたのではないかと思う。
今回のお看取りを通して、家族が最期に立ち会うことができないケースも多くあるが、患者、家族が最期の時までに一緒に居られる時間をどう過ごすか、本人が最期まで自分らしく過ごすためにはどんな看護ができるのか、後悔しないような看護を提供していきたいと思った。

 

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