安全基地

安全基地
「大変そうな患者さん、プライマリーにしちゃった」
2年目の春、やっと仕事に慣れてきた頃先輩に申し訳なさそうに言われた。
「ここはどこなの?私はどうすればいいの?体が痒くなってきた!!助けて~~!!」
Aさんは膀胱炎が治らず中々退院できない方。重度の認知機能低下があり、何度説明してもすぐに忘れてしまうし、ナースコールを連打しパニックになりながら上記を繰り返す。
何度説明してもすぐに忘れてしまう、他の業務に手が回らない。Aさんとの関わりを避け業務的な態度を取ってしまったり、担当を外してもらう日もあった。
娘さんが面会の時、車椅子で屋上に行きたいと希望があり、外に出た。
「お母さん、退院したらはま寿司にいこう。バリアフリー席があるんだよ。」
娘さんと話すAさんは見たことないくらい穏やかだった。私はAさんのことを知ろうとしていない、Aさんにとっても、よく分からない場所で検温してくるよく分からない人、と不安を抱かれてるのではと気づいた。
次の日からAさんと屋上に行き話す時間をつくるようにした。
五木ひろしが大好きで、近所に売っている数の子わさびが好物で、昔は人形作りの先生で、海外旅行が趣味だと話してくれた。
それからは検温後に痒いところを拭き薬を塗り、膀胱炎治療のためにたくさん水を飲んでもらい、持参のipadで五木ひろしを流し、ご飯の時は数の子わさびを添えるなど、Aさんを理解してます!という関わりを続けた。
功を奏して「検温してくるよく分からない人」から「名前は忘れたけど水をたくさん飲ませてくれる看護師」に昇格した。
むらはあるが、パニックになったりナースコール連打が少なくなる日もできた。
患者さんに穏やかに過ごしてもらうには、私はあなたのこと知っている安全な存在です!と胸張って言えるようにたくさん興味を持ち話すことが大切だと学べた。
今後も色々な患者さんにとって安全な存在になれるような看護を目指したい。