口だけ看護師
口だけ看護師
目指す看護師像を「丁寧な看護師」とした私が1年目の新人だった頃、言葉遣いに気を付け、ケアをする時は「オムツ外します」「おしり拭きます」と都度説明をした。
患者さんから丁寧な対応だと言ってもらえることも度々あり、目指す看護師像に近づけているような気がしていた。
ある日、普段からよく話をさせてもらっている患者さんのオムツ交換をしていたときだ。「○○さんってさ、言葉は丁寧だけど、オムツ交換は丁寧じゃないよね」と言われてしまった。冗談交じりだったが、本当にショックだった。「丁寧な看護師」のつもりが、口だけの看護師だと言われた気がしたからだ。とても恥ずかしく、穴があったら入りたかった。というのも、毎日の業務は忙しく、技術のない私は、「忙しいから仕方ない」と自分に言い訳をしながらケアをしており、丁寧なケアには程遠いことは自分でも薄々分かっていたからだ。
以降、その患者さんのケアに苦手意識を持つようになった。どんなに丁寧な言葉遣いで接しても、口だけ看護師であることを見透かされているように思え、プレッシャーを感じるようになったからだ。その患者さんに対しては特に丁寧なケアを心がけたのだが、すぐに出来るようになる訳もなく、口だけ看護師の日々が続いた。
その患者さんの退院で私は口だけ看護師である恥ずかしさや負の感情から開放されたのだが、ケアの際、折に触れてこのときのことを思い出すようになった。
あれから2年以上が過ぎたが、未だ毎日の業務は忙しく、ケアは時間に追われていて、「丁寧な看護師」になれたのかどうかも分からない。でも、患者さんの反応や自分の手技など「丁寧な看護が出来ているだろうか」という問いかけにより、初めて見えてくる物があったことだけは分かる。
今後も自分への問いかけを忘れず「口も行動も丁寧な看護師」を目指していきたい。