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一杯のコーラが教えてくれたこと

一杯のコーラが教えてくれたこと

一杯のコーラが教えてくれたこと

ゆっくりとコーラを口に含み、A氏は「うまいな」と小さく笑った。

その穏やかな表情を見た瞬間、この時間を大切にしたいと強く感じた。


A氏はアルコール性肝硬変による腹水貯留、体動困難、食欲不振のため入院された60歳代の男性である。腹水穿刺や点滴、内服などの治療を行っていたが、治療への拒否もあり、肝性脳症による意識レベル低下やせん妄を繰り返していた。元々はADL自立であったが、入院後はベッド上で過ごす時間がほとんどであった。

治療により状態が比較的安定していたある日、A氏はぽつりと「家に帰って、好きなものを食べたい。ジュースが飲みたい」と話された。治療や制限のある中で悩んだが、チームや主治医と相談し、その思いを尊重したいと考え、希望時にはコーラを口にしてもらった。ゆっくりと飲み込み、再び笑みを浮かべる姿は、今でも印象に残っている。


家族は姉のみで、姉は持病を抱えながら、生活費や治療費を負担しており、「もう関わりたくない」と話されていた。それでも数週間に一度は面会に訪れ、弟を思う気持ちと現実の重さの間で揺れているように感じた。

施設への退院調整を始めた矢先、A氏は肝性脳症が急速に進行し昏睡状態となり亡くなられた。ご家族へ連絡し、来院までの時間、私はA氏の最期に寄り添った。

来院された姉は淡々とした様子であり、家族関係が希薄なのだと思っていた。

しかし姉は「エンゼルケアを一緒にしたい」と希望された。

ケアの中で、姉は幼少期の思い出や姉弟としての記憶を語りながら、「よく頑張ったね」「長いこと大変だったね」と、涙を流しながらA氏に優しく声をかけていた。


その姿を見て、言葉や態度だけでは計り知れない家族の思いがあることを知った。疾患や生活の影響で関係性が変化しても、家族としての愛情や絆は確かに残っている。患者の背景に目を向け、最期の時間を大切に支えることの意味を、A氏との関わりから学んだ。

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