「家に帰りたい」という思いに寄り添う
「家に帰りたい」という思いに寄り添う
「本当に一日だけでも家に帰れて本当に良かったです。ありがとうございました。」
Aさんは前日に一度退院されたが、帰宅後に嘔吐を頻回に認め、胆のう炎の診断にて再入院となり、胆のう摘出術を受けた。術後は痛みの訴えは少なかったものの、しばらくすると「帰らせてください」と看護師に話されるようになり、娘さんに「帰りたい」と気持ちを伝えていた。自立してトイレに行ける方で、便秘を気にされていたが、入院後半は嘔吐なく過ごされていた。
Aさんの「帰りたい」という思いを大切にしたいと考え、医師や多職種と相談しながら退院調整を行い、無事退院することができた。しかし、退院翌日の明け方から嘔吐が頻回に出現し、再度受診となった。糞便性のイレウスと診断され、緊急で経肛門イレウス管留置を試みたが、CTでフリーエアが認められ、その後急変し、意識レベル低下した。
元々DNAR取得していたが、処置中の急変であったため、CPA対応となった。挿管も試みられたが、開口困難で実施できなかった。娘さんへ病状説明行い、「もう十分頑張ってくれたので、もうなにかしてもらわなくても大丈夫です。早くみんなのところへ行きたいと話していましたし。」と話された。
一旦帰宅していた娘さんが病棟へ来られた時、私を見てこう言いました。「あ…Bさん、本当に一日だけでも家に帰れて本当に良かったです。家でテレビを見たり好きなものを食べたりできました。ありがとうございました。」
Aさんは娘様をはじめとした多くのご家族に見守られながら、穏やかに息を引き取られた。特別に長く関わっていた患者ではなかったが、Aさんやご家族にとって「家に帰れた時間」は大切な意味を持つものだったのだと感じた。
自分にとっては日常の看護の一場面であっても、患者や家族にとってはその時そばにいるただ一人の看護師である。丁寧に関わることそのものが、患者・家族の支えになると実感した出来事だった。
