ごちそうさま。
ごちそうさま。
看護師として3年目を迎えた春、食べることが好きな、食道がんを患う患者A氏がいた。
「食べることを叶えたい」という本人の思いと奥様の希望があり、リスクを理解した上で食道ステントを留置した。留置直後は疼痛が強く、飲水も困難な状態であったが、徐々に疼痛は和らぎ、流動食やりんごジュースから経口摂取が開始された。疼痛により食事が摂取できないこともあったが、少量ずつ摂取を続け、次第にペースト食まで食べられるようになった。
疼痛が落ち着くと「早く退院したい」という帰宅願望がみられるようになり、Nsコールで同様の訴えを繰り返すこともあった。また、自身の携帯電話で奥様に連絡し、「帰りたい。どうして帰れないのか」と伝える様子もみられた。しかし、必要な栄養量は確保できておらず、退院可能な状態ではなかった。食事量が徐々に増え、疼痛も落ち着いていたため、私はA氏を改善傾向にあると捉え、このまま退院に至るものと考えていた。
ステント留置後しばらく経過した夜勤帯、夕食後にA氏はいつも通り「ごちそうさま」と手を合わせ食事を終えられた。他患者の下膳後にラウンドを行うと、A氏の呼吸が停止しているところを発見した。直ちに奥様へ連絡し来院を依頼したが、奥様の到着直前に心停止となった。入院中の様子や最期の状況を奥様にお伝えすると、深い悲しみや喪失感が強く見られていたが、表情が一瞬和らぐ様子が見られた。
ご家族が最期に立ち会うことができないケースも多くある中で、最後に立ち会うことができなかったご家族に対し、これまでの入院中の様子や最期の状況を丁寧に伝えることは、喪失感や悲しみに寄り添う看護師としての重要な関わりであると考える。
また、本人が最期までその人らしく過ごすために、どのような看護ができるのかを常に考え、チームや他職種と連携しながら、後悔の残らない看護を提供していきたいと感じた。
