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覚えていてくれた人

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覚えていてくれた人

看護師3年目の夏、私には忘れられない出来事がある。


Aさんは認知機能の低下により、大声を出したり、柵を乗り越えて何度も転倒したりと、手のかかる方だった。私はプライマリーだったためよく受け持ちをしていたが、正直面倒くさくて嫌だった。

その日も私はAさんの担当だった。センサーコールが鳴り訪室すると、今にも転びそうになっていた。またか…と少し呆れて思いながらベッドへ戻そうとすると、Aさんが「寂しい…」と呟いた。私はハッとした。ここがどこかも分からない、希望を言えば否定され怒られる、そんな状況怖くて寂しくて当たり前である。その日から、時間が空けば車椅子で散歩をしたり、そばで記録を書いたりと少しでも不安や寂しさが和らぐよう関わった。それもあってか、退院日には、「また会いにくるね」と泣きそうな顔で言いながら自宅へ帰っていった。


 退院後は、日々の忙しさからAさんの存在は忘れかけていた。そんなある日、病棟へ1本の電話が来た。Aさんが1階で私を呼んでくれと言っていると。一瞬頭には?が浮かび、「誰だ、それは」と思いながら降りると、入院中一緒に撮った写真を握りしめているAさんがいた。声をかけると、嬉しそうに「やっと会えた!」と話し始め、今の生活のことを話してくれた。毎日楽しい、歩けるようになった、と。認知機能を考えると私のことは忘れていてもおかしくないはずなのに、最後の言葉まで覚えていて、会いに来てくれたことが本当に嬉しかった。自分の看護が報われた気がした。


 病棟では、あの人は手がかかって大変という言葉を耳にしたり、認知症患者に対して怒ったりしている場面をよく目にする。大変という言葉で片づけて、訴えを聞かなかったことするのは簡単である。しかし私は、なぜその行動や発言をするのかを考え、入院しているからという理由で人間らしさを損なうことなく、その人らしい生活が送れるよう支援できる看護師でありたいと思う。

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